悔しいけど好き
「…帰る」

「…はぁ!?」

無表情のまま見下ろされて今度は何してくるのかと固まっていたら奴はさっさと踵を返して玄関へ向かう。

「ちょ…この状況でいきなり帰るって何?話はまだ終わってないけど!?」

私の怒りをどうしてくれるんだ!と奴を追いかけると靴を履いてくるりと振り向いた。

「俺は!……」

いきなり叫ばれビクッと後退りした私を一瞥し、奴は一瞬顔を歪め頭を振った。

「な…何?」

「もういい、予定が狂った。また来る」

そう言うとあっという間に奴はドアの向こうに消えていった。

「は…?…なに…なんなのよ…」

奴の迫力に負けて何も言い返せなかった。
何で奴は急に不機嫌になったのか全然わかんない。

「に…二度と来んな!」

ドアに向かって叫んで鬱憤を吐き出すも納得いかない。
予定が狂ったって私のせいなの?
どうせまたどっかの誰かとのデートがおじゃんになったとかでしょうが!
だったらうちにこなけりゃいいのに!
(呼んだのは私だけど)

ムカムカしながらソファーにどかっと座ると床に転がった紙袋が目に入った。

「あいつ……またパンツ置いてった!!」




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