悔しいけど好き
やっぱり二人はいい
「おかえり」
「あ…ああ、ただいま」
先に帰っていた凪に迎えられ家に入る。
ここは結婚するにあたり手狭になった凪の部屋を引き払い借りた2DKのマンション。
さすがに会社から徒歩5分とはいかずにそれでも電車で二駅の歩いても行ける距離にある。
「先、お風呂はいるでしょ?ご飯用意しとくから」
そう言ってさっさとリビングへと戻ってく凪の後ろ姿を見送りため息をついた。
家では普通に甘い新婚生活をしてると思うのだが今日はやけに素っ気ない。
サッと風呂に入りリビングに行けば凪が料理をよそっている。
その後ろ姿は見慣れていてもいいもんだなと眺めていると振り向いた凪と目が合った。
照れたように笑みを浮かべテーブルに乗せたおかずは俺の好きな玉子焼き。
他は味噌汁と煮物と焼き魚と最近和食にハマってるらしい凪の定番料理だ。
食卓に着き二人でいただきますと手を合わせ食べた料理はとても美味い。
あーやっぱ幸せだなーと玉子焼きを食べてると凪の視線に気が付いた。
「どうした?」
「ん?ううん。美味しい?」
「うん、美味いよ」
「そ?よかった」
何でも無さそうに装ってるけど何か言いたそうな顔をしてモクモクと箸を運ぶ凪。
他愛ない話はするのに本音を聞かせてくれないまま食後の後片付けを二人でして凪は風呂へ。
俺は凪の家から持って来た二人掛けソファーに座り背を預けて天井を見ていた。
「鷹臣寝てるの?」
顔を前に向けると風呂から上がったばかりの高揚した頬で凪は立っている。
その手を取り隣に座らせた。
「凪、怒ってることあるだろ?」
「え?別に、無いけど…」
「ちゃんとこっち見て」
こっちを見ない凪の両頬を挟み目を合わせるとおずおずと上目遣いで見つめてくるからつい可愛いなとキスしたくなる。
…いや、今はまず話し合いだ。
理性を呼び戻し一瞬逸した目を合わせた。
「嶋田のこと気にしてるだろ?何で言わない?いや、その前に俺が悪いんだが…言いたい事あれば言ってくれよ。煩いとかベタベタすんなとかちゃんとしろとか文句でも不安でも何でも聞くから」
「……無いよ文句なんて。鷹臣のこと、信じてるから」
俺の訴えに少し考えた凪の答えがこれだ。
うっと詰まされた気分になる。
嬉しい反面俺は、散々文句のオンパレードを頭の中で繰り広げていた自分に喝を入れたい。
「凪…丸くなったなぁ…」
「む…何それ?」
むくれる凪に苦笑い。
俺と違って大人な凪に感心してるのだが…そういう顔は幼い子供のようだ。
「でも……」
俺の手を降ろさせまた目を背ける凪は言いにくそうに口を開いた。
「嶋田さんは自分に素直なだけで良い子だと思うけど、やっぱり…鷹臣に触るのは、イヤかな。仲良くしてるの見ていたくない…」