悔しいけど好き
………
「鷹臣のばか……」
俺の胸に顔を埋め熱いため息と共に吐き出した言葉にくすりと笑い凪の頭を撫でた。
「俺だってヤキモキしてたんだ。安達の奴、凪の前じゃ大人しいが俺といる時の悪態と来たら腹立ってしょうがねえ」
「え?安達くん?」
どういうこと?とでも言うように顔を上げた凪は首を傾げている。
それをむりやりまた胸に押し当てた。
「……いや、凪は知らなくていい」
鈍い凪は自分に向けられる好意になかなか気付かない。
あの幼馴染のこともそうだった。
俺にとってはいい事だからあえて言う必要も無いだろう。
それは敵意も同じで俺と結婚して相当妬まれてるらしいが、周りにはガードしてくれる協力者がいるのでそれもあって凪はのほほんと呑気にしている。
ちょっとは抵抗していた凪はそのまま抱き付きため息を零してる。
安達の話を追求して来ないとこを見ると凪はたいして興味も無いらしい。
安達!やっぱお前眼中に無いわ!残念だったな!
ふてぶてしい顔の安達を思い浮かべこっそりほくそ笑む。
「ああ…、やっぱり鷹臣といると落ち着く…」
「ん?」
「あのね…」
「どうした?」
また口ごもる凪を促すように体を離そうとするとひしっとすがりついてきた。
どうしたのかと思いながらも抱きしめると力を抜いた凪は話し出した。
「今日、元村次長に呼ばれた時、ほんとは会議室で話そうって言われたの。でも…」
「ん?」
もしや、元村次長にまで告白まがいのことでも言われたのか?
一瞬冷や汗が流れた。
一難去ってまた一難とはこのことか?
安達の事は気にしなくていいと思ったばかりなのに今度は元村次長…。
凪の好きなタイプなだけにやっぱり焦りが生じる。