悔しいけど好き
「さっきの続き。私の聞きたいこと分かるよね?何で無視するの?」

「言いたくない」

「はあ?」

「言いたくないから無視した。以上」

「何それ?それで答えになってると思うのっ?」

奴は全く聞く耳も持ちませんって目の下にくまを作った顔でそっぽを向く。
ムカッとした瞬間に明莉の話が思い浮かばれた。
私もこんな感じで頑なだったのかな?

「人の振り見て我が振り直せ」

「あん?」

怪訝な顔でこっちを見る奴が自分と重なった気がする。

「私もあんたみたいに聞く耳持たなかったんだね?今やっとわかった気がする」

「……」

「余計なお世話だって思ってるでしょう?自分は大丈夫だって過信してる」

「そんなことは……」

「無いって言える?あんたも私のこと心配して色々動いてくれたんでしょ?私も心配してる。あんた今完全に私の二の舞になってるよ」

「心配…してくれてんのか?」

なんだか捨てられた子犬みたいな上目遣いで見てくるからちょっと可愛いとか思っちゃった。

「そりゃするでしょう?同僚だし私はあんたのアシスタントなんだから」

< 40 / 325 >

この作品をシェア

pagetop