悔しいけど好き
色々不満もあるけど今はとにかく奴の負担を軽くしたい。
私のために営業先を全て引き受けて奴が倒れてしまっては元も子も無いではないか。

「私に軽い仕事ばかりさせてずっと残業続きだったんでしょう?あんた自分が思ってるより顔が疲れてるよ?」

「…ほんと、それ、お前に言われたかない」

ふんと横向く奴にムカつくより苦笑いが溢れる。

「わかってるって、私が一番死にそうだったんでしょ?私の教訓を今活かさないでどうすんの?あんたみんなに心配されるより笑われちゃうよ?」

それは嫌なのか渋い顔をする奴が面白くてつい笑ってしまった。
ギロと睨まれピシッと背筋を伸ばし必死で真顔を作る。

「はぁ~、わかった。頼むよ」

「あ、じゃあ…」

「ただし!お前は必ず定時で上がれ。残業はさせない」

「えー?別に少しくらい残業したって…」

「ダメだ!お前元はワーカーホリックなの忘れてないか?直ぐにのめり込んで周りが見えなくなるだろ?」

「ちょっと、それ、そのまんまあんたにお返しするわよ」

< 42 / 325 >

この作品をシェア

pagetop