悔しいけど好き
暫し沈黙した後の低い声にビビりながら言い返した。
こいつはほんとに私の感情を逆撫でする!

「あるわけ無いじゃん!もうここ3年くらい…って何でそんなことあんたに言わなきゃなんないの!?大体彼氏がいたらあんたを簡単に家に入れたりしないわよ!」

抱き寄せる手を叩き落として奴を睨めば目をぱちくりして驚いてる。
そして「そうかそうか」と正面から私の両肩を叩きニヤリと笑いやがる。

「そりゃそうだよな?俺に抱きついて離れなかったあの日に彼氏なんて来たら修羅場だもんな。いやぁ安心した」

「んなっ…!」

「それにしても、簡単に俺を入れてくれたのはどういうことかな?」

ん?ん?とニヤニヤしながらの覗き込んでくる奴の顔がまともに見れなくて顔を背けすくっと立ち上がった。
お?と顔を上げる奴の気配を感じて歩き出す。

「おい、どこ行く?」

「お風呂よ!覗かないでよ!」

ぷんぷんしながらバスルームに入りドアを勢いよく閉めた。
くくくっと奴が笑い声が聞こえる。

決して逃げた訳じゃない。
決して…そう思って鏡を見たら真っ赤になって情けない顔が目の前にいた。

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