悔しいけど好き
「おーい、聞いてるかー?」

「んぎゃ!」

耳を塞いでた手を無理やり剥がされ、耳元で低い声で囁かれゾクッと背中に電気が走った。

「な…」

絶句して瞑ってたらしい目を開けると目の前でパンツ一丁の奴が座り込んで私の両手を握ってる。

「毎度毎度そんなに驚くなよ。いくら何でも傷つくぞ?」

拗ねたような顔で目線を斜め下に向ける奴の顔がほんのり赤くてちょっとキュンとしてしまって冷や汗が出る。
い、いやいや、この状況ちょっとヤバいっしょ!?
ぶんっと腕を振って奴の手を払い猛抗議した。

「は、離してよ!毎度毎度そんな格好してるあんたが悪いのよ!」

「ひでーな?仕方ないだろ?着るもの無いんだから」

「とにかく!服着てよ服!」

もう目のやり場がない!
そっぽを向いてなるべく奴が視界に入らないようにした。
ばくばくと心臓が痛い。

「ヘイヘイ、わかりましたよ」

徐に立ち上がった奴はあろうことかその場で服を着だしたから私は着終えるまで固まってなきゃならない。
もう、本当にこいつといると調子が狂う…。
黙って窓の外を見てるしかなかった。

外は快晴
青い空にうっすら雲が漂っている


あ、今日もいい天気だ…。


< 52 / 325 >

この作品をシェア

pagetop