悔しいけど好き
あの日はしっかり朝食まで食べていき、始発で帰ったあいつはまた出勤前に現れて大きなバック一つを持ってきた。

「…それ、何?」

顔をヒクつかせながら聞けば、「ん?お泊りセット」とニコニコと答え、「ほら、出勤時間だ行くぞ」と私に文句を言わせずずんずんと引っ張り出された。

会社に着くなり私はあの資料室に奴を連れ込み猛講義!
「もう絶対あんたを家に入れない!」と言ったら奴は「あ、いいの?仕事回さないけど?」と脅してきやがった!

「…あんたねえ…」

「ま、いいじゃん。自分の家に帰るのしんどい時に寄らせてもらえばいいんだからさ?仕事回してもらって俺の体調管理も出来てアシスタントとして一石二鳥だろ?」

「なんでそこまでしなきゃなんないのよ!」

「まあまあ、もう時間だ!行かないと!」

奴は青筋立てる私の背中をぐいぐい押して資料室から出ると目の前に先輩の美玖さんがいた。

「あ…」

「あ、凪ちゃん、神城くん…」

「ど、どうしたんですか?」

二人で資料室に入り込んでいたものだから変な想像して様子を見に来たのだろうかと冷やりと汗が滲んだ。
美玖さんたち営業部の皆は私と神城が仲が良いと勘違いしてるからどう言い訳したらいいかこの一瞬で頭を悩ます。

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