悔しいけど好き
奴はしっかり仕事を回してくれるようになった。
今までほぼ出来上がっていた資料を清書するくらいしかやらせてもらえなかったけど、どっさり資料を置かれ、一から資料を作ってと言われ、どこの会社に何時にアポイント取っておいてと秘書的なことも任されるようになった。
お蔭で今まで知らなかった奴のスケジュールが逐一わかるようになり、連絡も取りやすくなった。
そして、奴の性格というかやり方が分かってきた。
大胆な発想、穴だらけのおおざっぱな計画。
でも、その代りトラブルがあっても臨機応変に対応できる柔軟性と機転が奴にはある。
緻密に計画してきた私には出来ないことだ。
だけど私は今は奴のアシスタント。
穴だらけの計画書に私の意見も取り入れ資料を作る。
意見が合わなくてぶつかるところもあるけどそんな時は部署で喧嘩腰に話してたら周りに迷惑かけるからあの資料室に連れ込み大いにバトルした。
「俺のやり方でいいの!聞き分けないなお前!」
最後にはそう言って奴は私に迫り硬直する私の鼻を遠慮なくがぶりと噛みつく。
「ぎゃ!」
何かにつけ奴は鼻をかじってくるからもう居たたまれない。
もうなんなんだいったい!
それでもバトルした甲斐があり出来上がり上々の資料を満足げに見る奴の顔を見てほくそ笑んだ。
そしていつの間にかあの資料室は説教部屋と言われるようになっていたと知るのはもう少し後の事。