悔しいけど好き
「ふ、ふふ…」

「どうした?」

帰り道、ふと足が止まり思い出してしまって鷹臣が怪訝な顔で振り向いた。

「私、いろんな人に心配されてたんだなって改めて思った。ダメだね、ちゃんと反省しないと。でも支えてくれた皆が居たから私は立ち直ることが出来て今は前より充実してる気がする。私は人に恵まれてるなってうれしくなっちゃった」 

「皆お前を認めてるからな。その筆頭は俺だぞ?もう少し俺を敬えよ?」

「あんたには、それ以上に憤慨することの方が多いけどね」

「ばーか、そこは素直にありがとうだろ?」

そう言って鷹臣は私の手を握りニヤリと笑う。

「…何、この手?」

「こんなところで立ち止まってたら通行の邪魔だろ?涙目で歩いてたら転ぶぞ?」

素っ気ない態度で先を行く鷹臣に手を引かれ歩き出す。
いつの間にか目尻に溜まった涙を拭いて繋がった手を見つめて頬が緩んだ。

~支えてくれてありがとう。今度は私が支える番だ~

面と向かって言葉にできないから心の中で想っておく。
すんっと鼻をすすって奴に追いつくように力強く足を踏み出した。
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