悔しいけど好き
山本さんは冷かすように笑って私の話をまともに受け止めてくれない。
目くじら立てる私に美玖さんはオロオロするばかりだ。

「ああ、なるほど。羽柴の機嫌が悪いのはあれのせいか」

正木部長が目線を人だかりのある遠くにやって呟いた。
そこにはワイワイ盛り上がる女子の集団。
その中心を指さして美玖さんたちにも教えている。

「神城の奴、羨ましいくらい女子に囲まれてるな?羽柴も行けばいいじゃんか?」

「やですよ!なんで私が行かないといけないんですか!」

「でも、神城は来て欲しそうだぞ?ほら、さっきからこっちをチラチラ見てる」

「え…」

正木部長に言われてつい奴のほうを見てしまった。
でも鷹臣は別にこっちを見ていやしない。

…と、思った瞬間、鷹臣はこっちを向いてバッチリ目が合った気がした。
じっとこっちを見てにやりと笑う。
ドクッと心臓が跳ねた。

「やっぱり、ああやって囲まれても凪ちゃんの事が気になるのね」

「美玖さん…あれは、どうだ羨ましいだろうと自慢してる顔ですよ」

ため息混じりに言って美玖さんを見ると頬に手を添えキラキラした目でほぅっとため息を付いている。
何か天然の美玖さんに苦笑いしか出ない。

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