悔しいけど好き

結局、私と鷹臣は話すどころか近づくことも無くビールパーティーはお開きとなった。
つい鷹臣を見てしまって何度も目が合いその度にふんとそっぽを向いた。

「明莉、後片付けお疲れ、先帰るね」

「うん!じゃ、明後日ね!寝坊しないでよ」

「分かってるって!7時集合でしょ?じゃあね!」

お盆休みは1週間。
明後日は明莉と一泊旅行、そのまま実家に帰省する予定だ。

エレベーターに乗るためボタンを押して待っているとスマホを忘れていることに気付いた。
丁度エレベーターが開いて乗り込むと営業課のある5階のボタンを押した。

「あったあった」

自分の机の上にスマホを見つけてさあ帰ろうと廊下へ出るとエレベーターとは反対側からぼそぼそと話声が聞こえた。
そっちには自販機と喫煙室しかない。
誰か帰る前に寄ってってるのかなと気も留めずに行こうとするとその声が鷹臣のような気がしてなんとなく足を向けた。

「……嬉しいけど…」

「……なの…」

やっぱり鷹臣と、誰か女の人の声だ。
そろりそろりと足を忍ばせてまるで盗み聞きしてるみたいで嫌な汗が出る。
角に差し掛かった時、ダメだ、帰ろうと踵を返そうとした時に奴の声が聞こえた。

「…ああ、好きだ」

「っ…!」

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