悔しいけど好き
今度はメッセージアプリだった。

[おーい、イマドコにいるんだー?]

[早く帰ってこいよー]

表示されるメッセージにどくんとまた嫌な心臓の動き。

何で?
奴は彼女と両思いになったんでしょ?
何でその足で私の家に来るの?
普通彼女とどっか行くなりどっちかの家に行くでしょう?
何のために私の家に…

[話があるんだ。早く帰ってこい]

ああ…そうか…
彼女が出来たからもう、私の家には来ないって言いに来たのか。
わざわざそんな、告白した日に来なくたっていいじゃない…
どくんどくんと大きく打ち振るっていた心臓が急速に終息し、代わりに苦しいくらいに冷えていく。

[今日は明莉の家に泊まるから帰んない]

今は何も聞きたくない……。

[えー何でだよ?まだ会社だろ?ちょっと帰って来いよ]

[もう明莉ん家だから無理]

「えーーーーー!」

ドアの向こうで奴の声が聞こえる。

[じゃあいつ帰るんだよ?明日か?]

[明日から明莉と旅行でそのまま実家に帰省するから当分帰らない!]

「ええーーーーーっ!いつ会えるんだよっ!」

更に奴の不満そうな声が聞こえる
何でそうまでして私に会いたいのよ…。

「仕方ねえな…」

やっと奴は諦めて帰るみたいだ。
奴の気配が消えていく。



[帰って来たら連絡しろよ]



[逢いたい]



振動するスマホ
雫が落ちて表示されるメッセージが歪む

「もう……私に構わないで…………」

震える声でそう呟いた。

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