悔しいけど好き
「今日一度もスマホ見てなかったよね?神城君から連絡来てるんじゃないの?」

頻繁にスマホが振動してるのは気付いていたけど奴からだと思うと見る気にもなれなかった。

「無駄だよ…それに今は奴の声は聞きたくない」

「本気なら凪の想いをちゃんと伝えないと、後悔するよ?」

「…もう、後悔してるよ。だけど奴はもう彼女がいて私の想いは迷惑でしかないよ。奴を困らせることはしたくない」

「…凪………」

「ゴメンね、せっかくの旅行なのにこんな辛気臭い話しちゃって。楽しさ半減だよね」

頭をポリポリ掻いて謝れば明莉は優しい眼差しで見つめてきて思わず涙が出そうになる。

「そんなこと無いよ。凪が辛い思いしてるのに一人で浮かれてられないよ。何処にいたって凪が心から笑ってくれる方が何倍も嬉しいし、そのために私が出来ることは何でもする」

「明莉…ありがと。明莉に話せて気持ちが楽になったよ。この休み期間に自分の気持ち整理して奴のことは元のただの同僚に戻すことにする。ちゃんと前を向かないとまた死にそうだって言われちゃうからね」

「凪、それでいいの?」

「うん、いいんだ」

明莉がいてくれるから大丈夫。
心配そうに見つめる明莉ににっこりと笑い返した。

大丈夫、辛いのは最初だけ。
きっと時間がゆっくり解決してくれるはず。
それまではちょっと無理してでも何でもないように振るまわないと余りにも近すぎる会社での奴との距離がギクシャクしてしまう。
それだけは避けたいから家に帰ったら然り気無く奴にメッセージを送ろう。
~もう、彼女が出来たんだから家に来ないで~
ただそう送ればいい。
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