悔しいけど好き

「やっ!だから!ほんの一瞬だって!直ぐに引き剥がしたし!」

私がジト目で見ると奴は慌てて言い訳をする。
あの日はずっと女の子に囲まれて鼻の下伸ばしてたし、全然私のとこ来なかったし、その上キスまでして、私はそれを見てしまいショックで散々だったんだから情けない顔をする奴にいい気味とちょっと思ったりする。

「あの日はやたらと女子が群がって全然凪の所に行けなかったし、好きでもない奴に唇を奪われるし、あの後無性に凪に会いたくなって家まで行ったのに凪は居ないし、散々だった…」

ガックリと肩を落としショボくれた奴はぶつぶつと何か聞き捨てならないことを言っている。

「え?ちょっと待って?ビールパーティーの時私に近付きもしなかったのは…」

「ああ、やけに引き留められて、邪険にするわけにもいかないし全然凪の所に行けなかった。考えたらあいつもいたしやたらとあいつの話題を振ってきたから仕組まれてたかも」

「え、あいつって?」

「あ~ほら告白してきた…お前も言ってたあいつだよ、秘書課の荒川」

「ああ~……」

確か、神城君が好き!と公言していた割には告白してなかった人だなぁ。
ビールパーティーで同僚にお膳立てしてもらって告白したはいいけど振られちゃって自棄になって唇を奪ったんだろうか?
奴はあいつなんて言ってるし何かお気の毒…。
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