悔しいけど好き
奥からドタドタと足音を響かせて今度は母と兄がやって来た。

「凪、お帰り。遅いから心配してたんだよ」

「アクシデントの原因はその男か?凪」

「おにい…ごめん、遅くなって」

心配そうな母と訝しげに隣にいる鷹臣を睨む海里(かいり)兄さん。
なまじ鷹臣がアクシデントの原因だけあって否定出来ない。
じろじろと鷹臣を睨んでるから取り敢えず紹介しようと隣を見た。

「あ、こちら…」

「神城鷹臣と言います。凪さんとお付き合いさせていただいてます」

「えっ…」

折目正しく礼をした鷹臣は私の言葉を遮り自己紹介する。
付き合う…ことになったんだよね私達。
何だか家族に紹介なんて恥ずかしくなる。

「まあ、そうなの?よくお越しくださいました。さ、上がって下さい」

「あ、これお土産です」

と私が買ってきたお土産なのに鷹臣がお母さんに渡した袋は破けていて箱もつぶれてたりする。

「あ、アクシデントの原因はこのお土産で、ちょっとつぶれてますけど中は大丈夫ですので」

「あ…あらそう?」

上手いこと言い訳してにこりと笑う鷹臣に騙された母はにこやかに鷹臣を歓迎してくれる。
ちょっとホッとした様子の鷹臣と目が合いじろりと睨むと苦笑いされた。
まあ、大喧嘩してたなんて言えないし、上手い説明は私は出来ないから放っておくことにしよう。
そうしてまだじろじろ見る海里兄さんを尻目に居間へ入るとおばあちゃんとお父さんが座っていた。

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