悔しいけど好き
ありがとうと注がれたビールをイッキ飲みする周くんの男らしい喉仏をつい凝視してしまっているとぐいっと引っ張られた。

「ちょっと…」

文句がてら振り向けば不機嫌そうに私を睨む鷹臣と目が合い思わず目が泳ぐ。
それまで和やかだった団らんがピンと張り詰めた空気に変わった。
でもそれを感じ取ったのは私だけだろう。
おばあちゃんに話しかけられた鷹臣はにこやかに受け答えし周くんも海里兄さんと楽しそうに会話する。
間に挟まれてる私だけがなぜか緊張の中にいた。

湊斗め、絶対余計なこと鷹臣に言ったな?
影でくくくと笑ってる湊斗を見つけ目が合うと思いっきり睨んでやった。
しらっと目線を外す湊斗につい舌打ちしたくなる。

「凪、仕事は何やってるの?」

突然周くんが私に話しを振る。

「あ、うん、今は営業のアシスタントしてる」

「あれ?姉ちゃん営業でバリバリ働いてるキャリアウーマンなのよ!って自慢してなかった?」

「営業やめたのか?」

また湊斗が余計なことを言ってお父さんが心配そうに聞いてくる。

「何かやらかして下ろされたとか?」

海里兄さんがちゃちゃを入れてムッとするもその通りで何も言えない。

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