悔しいけど好き
「凪の彼氏は同じ職場?付き合って長いの?」

ズバズバ聞いてくる周くんにも苦笑い。

「鷹臣は同じ職場の営業で私は彼のアシスタント。付き合ったのは…つい最近…かな」

つい数時間前に自分の気持ちを自覚して喧嘩の末に付き合うことになったとはさすがに言えない。
ちょっと恥ずかしくて頬をぽりぽり掻きながら答えた。

「ああそう、今日は結婚の挨拶に来たわけじゃないんだ?」

「結婚っ!?」

周くんの爆弾発言に思わず素っ頓狂な声が出てみんなに注目される。
一瞬緊張した顔をしたお父さんの顔が目の端に映った。

「な、ないない!ほんと付き合いだしたばっかりだし!新しく仕事し始めたばっかりでそんなこと考えてないよ!」

「凪、なんでそんな否定する?」

慌てて首を振ると、鷹臣が不機嫌そうに言ってくる。

「だってそうでしょ?まだ始まったばかりなのに…」

振り向いた私は真剣な顔をする鷹臣に口を噤む。
まさか、付き合ったばっかりで結婚なんて考えてないよね?

すると、鷹臣は後ろへと下がり正座し座布団を横に避け両手を着いた。
何をし出すのかと皆が注目する中、お父さんの方を真っ直ぐと見据えた。

「お父さん」

「は、はい」

低く通る声に思わず返事をしたお父さんは胡坐をかいてた足を正座に直し畏まる。

「お母さん、おばあちゃん」

「はいよ」

お母さんも居住まいを正し、おばあちゃんもにこにこと返事をする。

「海里お兄さん、湊斗くん」

お?という顔で固まった二人。

「小笠原さん」

「え?」

俺も?というように目を丸くする周くん。
私は鷹臣が何を言い出そうとするのか見当もつかずに困惑してただ鷹臣の真剣な顔を見ていた。

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