婚約解消してきちゃいました?ヘタレ令嬢様のチートキャンプ!
そんな事を考えながら、馬を繋いで戻ってきた豪鬼に連れられて、会場である大広間へと向かう。
すると、背後から「おーい!羅沙ぁー!」と私を呼ぶ大声がした。
この可愛い声は…!
「おーい!おい!羅沙ーっ!」
「…沙那ちゃん!」
振り向くと、少し離れた場所から手を振っている。
私と目が合うと、こっちに駆け寄ってきてくれた。
私のもう一人の信頼できる友達が。
「やっほー羅沙!久しぶりだぁー!」
「沙那ちゃん、本当久しぶり!」
結んだ長い金髪をゆらゆらと揺らして私の目の前に現れる。
私より小柄で少女みたいな屈託のない笑顔を振りまく彼女は、これでも私より二つも歳上。
彼女は、沙那(しゃな)ちゃんといって、天竜八部衆が一人、迦楼羅王様の妹だ。私と同じく、王領の令嬢さま。
「沙那、大声出してみっともないですよ」
「あ、姉さま。まだいたの」
沙那ちゃんを追って、悠然と歩いてやってくるのは…なんと、迦楼羅王様。
沙那ちゃんと同じ金の糸のような髪をしているが、背は私や沙那ちゃんよりも大きく、体もまさに大人の女性。そのせいだけではないと思うけど、迫力の一言。さすが、女性なのに王領の主。