婚約解消してきちゃいました?ヘタレ令嬢様のチートキャンプ!
後ろ指を差され、明らかに自分に向けられた嘲笑うその声が恐い。
すっかり萎縮してしまって、王領から出ることも少なくなるほど。
成人になり初めての夜会に参加するまでは、人の集まる善見城へ登城することはなかった。
…なのに。
久々の善見城、その夜会の直後に舞い込んできたのが、この竜王様との縁談。
お兄様の顔を潰さないよう、ただ従ったら、あっさりと夜叉王領を出ることになった。
…いやいや、でも。
一族同士の繋がりを強化する政略結婚だからって。
この縁談、本当は嬉しかった。
何故ならば、兄の友人である竜王様は…私が密かに想い焦がれていた相手だったのだ。
竜王様は、友人である兄たちを訪ねて頻繁に夜叉王領に姿を見せていて、その付き合いは子供の頃から。
そんな彼は、王宮で顔を合わす度に私に必ず声を掛けてくれる。
その日の気分を伺う言葉や、他愛もない世間話をしてくれて。たまにお土産も持ってきてくれて。
普段、王領外の人からは好奇の目に晒されている私にとって、その優しい心遣いは有り難いものだった。