婚約解消してきちゃいました?ヘタレ令嬢様のチートキャンプ!
だが、そんなのも一切構いもしないのが、この男。
「ヒッヒッ…羅沙ちゃん?さあ、行きますぞ?」
豹牙は抱き抱えた私の顔をチラッと見ては、怪しく笑う。フザけてるよ。
「って、豹牙!天帝様が降りてこいって!怒ってない?怒ってない?!」
「あれはフリだろ?押すな押すな言って本当は押してくれみたいな?降りろ降りろ言って本当は行って来い!バッチコイ!ってんだよ」
「…違うと思う」
なんて厄介なご都合主義だ。
そして、フワフワと上昇した術陣は、みんなの制止の声を背に受けながらもゆっくりと城から離れていく。
「…さあ、行くぜ?」
豹牙の声を合図に、ちょっとずつ動いていた術陣は、ピタッと止まる。
すると、急にガクンと揺れて、その場から一気に急降下した。
風を纏い一気にスピードをつけた術陣は、あっという間に城を後にする。
「ひゃああぁぁ!」
「捕まってろ!一気に目的地へGOじゃ!」
顔に次々と当たる風が痛い。体が吹っ飛ばされそう!
風の塵にならないように、必死で豹牙の体にしがみつく。
でも、その先はワクワクの世界かと思うと、どうしようもない衝動に駆られて。
気付けば、その手を握っていた。
苦しくて辛い痛い世界よりも、ドキドキワクワクの世界へ。
無意識のうちに、奪って攫われてみせた。