婚約解消してきちゃいました?ヘタレ令嬢様のチートキャンプ!

「うししし…」


怪しい笑い声を漏らしながら、豹牙が手にしている物は、なんと火打ち石だった。



「…え?神力で火を着けないの?」



すると「ばかもん!」と怒られる。



「人間は神力なんぞ使えんぞ?いろいろあるが、人間様はこうしてファイヤスターターを使って火を起こすのだ!」

「ふぁいやすたーたー?」

よく見ると、火打ち石にしては随分小さいし、棒状で形が整っていて小さい。

それを豹牙は麻紐や枯れ草の塊の上で「えいえいえい!」と擦り合わせていた。

すると、パチパチと火花が起こり、あっという間にボワッと火が着く。

「わぁ!火打ち石より早い!」

「むふふふ。熟練者の技よ!」

「でも神力の方がすぐじゃない?」

「黙れ!せめて火起こしぐらいは原始的に行かんかい!」

「………」

原始的…なのかな。人間界の発明品を使うことが。



そして、火が着いた塊にフーフーと息を吹き掛け、瞬く間に火は大きくなる。




(わあぁぁ…)




火起こしなんて、この世界でも普通にやる。

でも、この絶景と大自然の中、この…テントの傍で、この焚き火台を使うことそのものが新鮮で、ワクワクした。
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