婚約解消してきちゃいました?ヘタレ令嬢様のチートキャンプ!
「ひひひ。キャンプ鉄板バーベキューですたい」
「ばーべきゅー?何?何?」
「ただの直火焼きだけどな」
ホント、次から次へと知らない言葉を聞かされると、その度に胸が弾んでワクワクさせられる。
「…と、その前に」
豹牙はふと席を立つ。ここを離れて崖っぷちの方へと足を進めた。
「そろそろ見頃だな?」
「な、何が?」
「ほら」
指を差すその方向に、つられて振り返る。
…それは、果てしなく。
「わ、わあぁぁ…」
気が付けば、もう日の入りの時刻で。
西の方向には、夕陽が沈みかけている。
風も止んで、静寂が訪れた。…夕凪の時間だ。
日中ずっと世界を照らし続けていた太陽は、本日最後のお務めと言わんばかりに、夕陽の橙色で地平線から世界を照らす。
崖っぷちの向こうに広がる夜叉王領が、一面その橙色に包み込まれるように染まっていた。
土色の大地も、森の緑も。
青い空も、取り取りの建物も、傍にある自分の手も。
全て、全てが暖かみのある橙色に染まる。