婚約解消してきちゃいました?ヘタレ令嬢様のチートキャンプ!
空の濃紺が漆黒へと変わり、夜も更けてきた。
顔に当たる風は少々肌寒く感じるけど、このふりーすのおかげで守られている体はそんなに寒くはない。
十分に腹ごしらえをして食事を終えると、豹牙は焚き火台の金網を外し、代わりに薪を入れる。
しばらく団扇で仰いだのち、その薪に火が移ると、焚き火台は昼間庭園で見たものと同じ姿となる。
炎は、キャンピングチェアに腰掛けている私達の背丈もないが、メラメラと暖を灯す。
赤が混じる夕陽のような橙色の炎を見ていると、こう…なんか。
「…いいね。しみじみとするね」
テント同様この炎があれば、あの野ざらし野営も寂しくなかったかも。
しかし、野営と聞いてあれだけ不安だったのに、そんなのどこかへ吹き飛んでしまった。
今は心からキャンプを楽しんでワクワクしてる。
「じゃあー羅沙ちゃん。缶ビールで乾杯」
「かんビール?」
「ほい」と手渡されたものは…ひやっと冷たい、円筒状の金属の…缶?
「ほれほれ。この丸い輪っか。プルタブのほうを上にして、これを手前にクッと引っ張る」
「え?え?」