婚約解消してきちゃいました?ヘタレ令嬢様のチートキャンプ!
私達から少し離れた場所に立ちそびえていたテントの端が、パチパチと音を立てて…燃えている。
ぽめが、その炎に向かって「わんわんわんわんっ!」と激しく吠え続けていた。
しかし、メラメラと揺らぐその炎は、焚き火のように暖かみある橙色の炎ではなく、血液のように真っ赤な炎。
間違いない。
さっき、私の掌から飛び出た紅蓮の炎だ…!
なぜ、テントに燃え移っているの…!
「ぎゃー!俺のテントが炎上!…羅沙、おまえぇぇぇっ!」
「わっ!わわわわっ!な、何でー!」
何でと言わなくても、恐らくあの火柱が登場した時の飛び火であろう。
でもまさかテントに燃え移るなんて、誰が想像しただろうか。
「ら、羅沙あぁぁっ!何とかしろ!おまえの炎、引っ込めろ!……あぁっ!おまえにはまだ無理か!…鎮火だ鎮火ぁぁっ!」
珍しく豹牙が慌てている。
無理もない。大事な大事な人間界のご褒美が目の前で炎上しているのだ。
しかし、私に頼むのは無理だとわかっているからか、炎上テントに向かって駆け出しながら手を翳す。