婚約解消してきちゃいました?ヘタレ令嬢様のチートキャンプ!
白龍様にじっと見られる。
だが、すぐに目を離され「…すぐ、ですか」と、一言返して、私に背を向けて向こうへと行ってしまった。
案外あっさりだった。
でも、すぐに解放されてホッとする。
改めて前を向く。
解放感からか、向かう方向へと早足になってしまった。
渡り廊下を抜けて外に出る。
そこには、神術騎士団の訓練場がある。
…竜宮に来た頃は、よくここに出入りしていた。
神術騎士団の人たちは、朱嘉様や白龍様みたいに嫌な人ばかりじゃなかったな。
『女性なのにここまで剣の腕が立つとは素晴らしい!』なんて、稽古をつけてくれる人がたくさんいた。
けど、それが竜王様の耳に入り、何故かひどく叱られた。
『ここでは剣の稽古をする必要はない!』なんて。
後にも先にも、竜王様に怒られたのはこの件だけだ。…あの時はかなり落ち込んだ。涙が出るほど。
唯一、ここでの良い思い出が少しだけあった場所だけど。
私の目的地はそこじゃない。
もう、早歩きではなく、駆け出していた私は、思い出の訓練場をも通り過ぎる。
用があったのは、その傍にある武器庫と、厩舎。
今、神術騎士団はお留守にしているので、どこも無人だ。