婚約解消してきちゃいました?ヘタレ令嬢様のチートキャンプ!
「そゆことで!…バイナラ!ストーカーさん!」
依然結界陣の下敷きになっている竜王様を残して、私達を乗せて浮かぶ術陣の上へと飛び乗る。
私の隣に来た豹牙は、ニヤリと笑って呟く。
「おまえ、なかなかカッコいいこと言えるんじゃん」
「そ、そう…?」
「おー!その心意気、きっとガーディアンになれるぞ!」
すると、術陣は一気に急浮上して、ガクンと揺れる。
術陣の向かう方向は、湖の向こうだ。
「ま、待て!行くな羅沙!…そっちは」
竜王様は、自分を押し潰す術陣を腕で退けながら、こっちに向かって何かを叫び掛ける。
私の隣で「デジャヴだな」と、豹牙は呟いてから「ぶははは!」と大爆笑していた。
竜王様…ちょっと可哀想なことしたかな。
だが、無情にも、彼を置いて術陣は一気に勢いをつけて前進した。
「じゃあ、湖飛び越えて、一気に行くどー!」
「わんわんっ!」
チラリと後ろを振り向いてから、私も前に向き直す。
…逃げるのでは、ない。
前へ進むのだ。
嫌な過去の自分は置いてきて、新しい自分が待っている明日へ。
それを立ち塞ぐ声なんて、聞こえない。
『行くな羅沙!…そっちは【魔の森】だ!』