婚約解消してきちゃいました?ヘタレ令嬢様のチートキャンプ!
「ううん、いいの。私もお父様を守りきれなかったこと、忘れちゃいけない」
「守りきれなかったとは?おまえのそんな話、聞いてないぞ?確か」
そう言いながら、豹牙は眉間にシワを寄せる。
…あれ?話してなかったかな。
「…本陣攻められた時、実は私、お父様の傍にいたの。なのに守りきれなくて…」
「へー。おまえほどの剣士がね。相手は如何程。羅沙はどんな感じでやられたのよ。…あの討伐遠征直後のおまえ、大怪我はしてなかったような気がするけど」
「うん。私は無傷だったの。相手は人型の魔族だった。突然現れて、お父様に斬り込んでいって…」
「人型かぁ。神力ナシじゃ手強いな。よく無傷でいられたな」
「………」
豹牙の何気ない一言に、考えさせられる。
…そうだ。
私、無傷で気を失っていたのだけど。
よく考えたら、強い人型の魔族相手によく無事でいられたと思う。
《羅沙、逃げなさい!》
《嫌です、お父様!……》
それは、何で…だったかな。
(………)
そこだけ、ごっそりと記憶が抜け落ちている。
ような、気がする。
何で…?