婚約解消してきちゃいました?ヘタレ令嬢様のチートキャンプ!
(これは…!)
メラメラと荒れるように、激しく燃え盛る炎の塊が二つ。
それらを中心とし、周辺の樹々に飛び火していて、渦を巻くように吹き荒れる。
一面、炎の海となっていた。
血液のように毒々しい紅色の炎に、辺りが埋め尽くされていたのだった。
(紅蓮の炎…!)
「あっ…ああぁぁっ…」
「あづい、あづいぃぃ…!」
未だ激しく燃え盛る塊の正体は…魔族か?
紅蓮の炎に、生きたまま焼かれている。藻搔く程の気力ももう無いのか、呻くのみで。
その命が尽きるまで焼かれ続けるのだ。恐らく地獄の苦しみであろう。
…それが、この【紅蓮の炎】の凄惨で恐ろしいところ。
羅沙の中に潜めていた、『闇』の神力。
炎の禁呪【紅蓮の炎】。
三年前のあの凄惨な光景と、ほぼ同じだ。
(何故だ…)
このような事態を防ぐために。
羅沙を、命の危険に晒さないようにするために。
…ただ君を守る、その為に。
この身を、力を捧げると決めたのに…!
飛竜の背から見下ろす、その光景にに絶句してしまう。
自分自身に対する不甲斐なさや、後悔、憤りを感じながら。