婚約解消してきちゃいました?ヘタレ令嬢様のチートキャンプ!

婚約解消を望んで飛び出してきたって、想い焦がれていることには変わりない。

何かと竜王様のことを思い出してしまう。



『羅沙、幸せになろう』



…それは、百日ほど前の話。

初めて水晶竜宮に足を踏み入れた日。

竜王様は、私の手を取ってそう言ってくれた。



あの時は、胸を躍らせて幸せな気持ちになっていたけど。

でも、それはまやかしのように、すぐに崩れた。




それから数日後の話のこと。

側妃の存在を知ってしまった私は、どうしてもそれについての説明を竜王様の口から聞きたくて。

夜に、自分の居室をこっそり抜け出した。



竜王様は、とてもお忙しい御方。

この竜王領の統治や、神術騎士団の指揮。

更に優秀さ故に、天帝様の側近として抜擢され、忉利天での公務などをされている。

こんなに忙しいだなんて、夜叉王領に遊びに来ていた姿からは想像出来なかった。



嫁入り前の私が、夜に殿方とお会いすることは禁じられている。

でも、ちょうどこの水晶竜宮に来た頃に、竜王様は大きい任務を抱えてしまい、善見城への登城が多くほぼ不在。

戻ってきても、遅くまでご公務されていて、夜じゃないと竜王様には会えない。
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