婚約解消してきちゃいました?ヘタレ令嬢様のチートキャンプ!
死の直前、譫言のように自分の子や周りの者たちの名前を呟く。
そんな中、羅沙がいない時に呟いていた一言が今も忘れられない。
《お願い、どうか…羅沙を守って…戦に行かせないで…神力を使わせないで…幸せにして…》
先の神力暴走の件のことか、黒闇天女のことか。
黒闇天女には『羅沙は死んだ』と告げてあるのだけど、その嘘にいつ気付かれるかわからないと、白楼様は不安を漏らしていたし。
しかしそれは、まるで残された俺達に向けられた遺言のようだった。
白楼様も亡くなり、棺の傍で静かに泣いている羅沙の背中を見て…密かに決意を掲げる。
今の俺では、何も足りない。
今のままでは、『闇』の神力からも、黒闇天女からも、彼女を守ることなんて出来ない。
目の前の辛い現実から、逃げてる場合じゃないだろう。
…竜王領に戻ろう。
戻って、自分のやるべき事をやらなくては。
強くなるんだ。
君を守りたい。ただ、その為に。
そんな決意を掲げた時も、柚子の香りが通り過ぎていた。