婚約解消してきちゃいました?ヘタレ令嬢様のチートキャンプ!
ワンコロが短い足で駆け寄ってきて、ハッハッと息を荒くして、背中の薬草を俺に見せてくる。
見覚えのある薬草だ。
「…ってこれ、センナ草!下剤じゃねえかよ!こんなもん煎じて飲んだら腹がくだるじゃねえか!おまえら、羅沙に下痢させるつもりか!」
「えー。マジ?滋養強壮でない!…じゃ、竜王にやるわ。おまえ飲め」
「わんわん!」
「…俺は便秘じゃねえ!」
まったく、この男は…!
…と、いうのも。
俺は、無責任で突飛な行動をとるこの豹牙という男に、何から何まで振り回されている。
善見城での公務から、羅沙との関係まで…!
この豹牙とかいう男。
何故か?俺の愛しい羅沙の一番の親友なのだ。男の身でありながら、親友。
俺が夜叉王領を訪れる際には、毎回と言っていいほど、いる。ずっっと羅沙と一緒にいる。男女の距離を越えていそうで、いない。俺には持てない、その特別な距離感が腹立たしい。
……男女の友情?成立するのか?するもんか!何も気にしてない素振りを見せて、実は下心満載なのではないのか?ほら、だって。全裸で羅沙に求婚していたじゃないか!
人の目の前で、堂々と嫁を掻っ攫い。
しかも、二人でキャンプ?!……同じテントで寝る?!朝のコーヒー一緒に飲んじゃう?!冗談じゃない!!
許されない……許されない!!
それに……!
「…豹牙」
「あぁ?なぁに?」
「おまえ、この三ヶ月間どこにいた?何してた?」
俺の質問にキョトンとした様子を見せる。
しばらく考えたのち、「おおっ」と声をあげる。
「人間界。そそ。人間界にいたのよー」
「はぁっ?!人間界?…ずっと入り浸っていたのか?!」
「そぉよー。人間界、ちょっとオモローな展開になっていたのよー。もう終局迎えたけどな?いひひ」
「…何だと!…おまえぇぇっ!」