婚約解消してきちゃいました?ヘタレ令嬢様のチートキャンプ!
…お兄様が、曰く付きの私のために、この縁談を取り付けたのはなんとなくわかっていた。
信頼できる人に私を預けたかったのだろう。
でも、他人の口からはっきり聞かされると、それは本当なのだと実感し…落胆させられる。
『我々としては、正妃には緊那羅王の御息女、蓮華様を推していたのですが。竜王様は何故か貴女を選んだ』
『れ、蓮華様…?あの歌姫の?』
『ええ、ご存知ですか?竜王様とは同じ歳で昔から仲がよろしかったのですが』
蓮華(れんげ)様…。
初めての夜会の際、竜王様に友人として紹介された覚えがある。
夜会では歌を披露していて、お姿同様、とても美しい声だった。
本当は、あの人が竜王様の正妃になるはずだったのに。
お兄様の頼みを断れなくて、私を正妃として迎えることになった。
そういうこと…?
更なる新事実に、茫然とする。
白龍様が続きとして、でも王が決めたことなのでそれに従うしかないとか、わかったなら早く部屋に戻れとか、私に言っていたような気がするけど。
あまりにも衝撃すぎて、白龍様のお言葉は頭に入っても擦り抜けていく。
白龍様が去った後も、しばらくその場に立ち尽くしてしまっていた。