婚約解消してきちゃいました?ヘタレ令嬢様のチートキャンプ!
好きな人と結婚出来ることになって、浮かれていたのは、私だけ。
私の知らないところで蠢いている感情があったなんて、知りもしなかった。
『羅沙、幸せになろう』
私を喜ばせたあのお言葉も、嘘。全部嘘。
私に見えていた喜びは、すべて幻だった。
…お兄様も余計なことしないでよ。
竜王様も、嫌ならそんな縁談断ってよ。
私、なんかバカみたいでしょ。
こんな政略結婚の上に祝福されない結婚、誰がしたいって思うの。
思い返すと、悔しいのか悲しいのか。じんわりと涙が溢れてくる。
もう、やめにしたんだ。解放されたんだし、前を向かないと。
…とは、思っていても。
割り切れない自分も心の中にはいて、胸中は複雑だった。
(………)
夜明けと共に、また馬を走らせる。
けど、頭の中は朦朧としていて、目の前の視界がグラグラとぼやけている。
馬に跨がるのがやっとではあるが、落馬せずに前進しているのは…逆に馬が私を落とさないよう気を遣っているのか。
いい馬選んだよ。