婚約解消してきちゃいました?ヘタレ令嬢様のチートキャンプ!
その事に気付いたのは、羅沙が豹牙と消えた日の夜で。
夜明けと共に、衝動的に単身、善見城を飛び出していた。
夜叉王が『あいつらはたぶん、金剛鬼宮裏の山でキャンプしてると思う』と言っていたのを手がかりに。
ここまで追ってきたのだった。
「…話、長ぇーな」
「………」
本っ当に、この男は。
おまえが尋ねるから話してやったのに、感想それ?…俺の気持ちとか、都合悪いところは伏せましたが。
「っつーか、俺の母ちゃんにケンカ売るなんて怖いもの知らずだなー。俺がこの世界で一番恐れる生き物、それは母ちゃん。次は親父。俺の逃げ場は兄貴しかいません。…竜王、おまえを勇者に認定するわ」
そう言いながら豹牙は「おぉう」と声をあげ、ブルッと震えている。
この無責任脳天気男が恐れるなんて、相当恐ろしいんだな。…俺は別に、そこまでそうとは思わなかったけど。
「して、奥様計三人は誤解だったわけ。なーんだ。好色王になったわけじゃないの」
「んなわけあるか!」
「しかし、政略結婚利用して誰にも渡さないとは…独占欲の極みだな」