婚約解消してきちゃいました?ヘタレ令嬢様のチートキャンプ!
「た…ただいま…」
「…うおぉぉっ!…何で!」
私が絞り出した声で帰還の挨拶をすると、門番は声をあげる。
すると、あれよあれよとどんどん他の門番が駆け寄ってきた。
「姫!輿入れで竜宮にいるはずなのになぜこんなところに!」
「王と…王と凪様を呼んでこい!急げぇぇっ!」
「いったい何が!賊にでも襲われたのですか?!…うわっ!臭っ!」
臭いって。そりゃずっと湯浴みしてないもの。
姫がボロボロで帰還。門の前は軽くお祭り状態になっていたが。
私は、何のリアクションをする気力もない。
門番の黒い鎧に、うちの騎士団の紋章が入ってるのを見て「あぁ、本当に帰ってきたんだなぁ…」と、しみじみ感じているという呑気な状態だった。
すると、門の向こうから懐かしい声がしてくる。
「…姫っ!…羅沙様ぁっ!」
…あ。凪だ。凪の声。
凪は、お兄様の家臣。うちの家令であり、頭が良いので私の教育係もしていた。
そんな凪は、物凄く血相を変えてやってくる。
普段冷静で落ち着いているのに、男のくせに長い銀髪を振り乱してこっちに激走して向かってきた。