婚約解消してきちゃいました?ヘタレ令嬢様のチートキャンプ!
「…わかった。今行く」
竜王様の短い返事に、黎奈様は頭を下げて向こうへと行ってしまった。
黎奈様が離れたのを確認してから、再び私の方を見る。
「な、何でそんな急に…と、とにかく。その話は帰ってきてからゆっくり話そう」
「そ、そんな!」
帰ってきてから?
だって、須弥山の転移術式を使っても騎士団の足では、阿修羅王領へは片道少なくとも五日はかかる。
その帰還、何日待つことになるの?
話の続きを口にしようとしたが、竜王様は笑いかけてくる。
「…行ってくるよ、羅沙」
茫然と立ち尽くす私の頭をそっと撫でた。
いい男の色気を漂わせている笑みを向けられると、胸が跳ねて心が揺れてしまいそうになる。
やだ。神術騎士団の鎧姿もお素敵…。
…あっ、うっとりしてる場合ではない!
「ま、待って下さいっ!」
しかし、その隙に竜王様は手を上げてそそくさと行ってしまう。
向こうにいる、黎奈様の傍へと。
色気にやられた隙に逃げられた!ああぁぁ…。