婚約解消してきちゃいました?ヘタレ令嬢様のチートキャンプ!
私待ちだったことに驚いて、慌てて準備をする。伽耶から荷物と剣を受け取り、急いで馬に乗った。
「王、羅沙様は病み上がりなので無理はなさらないで下さい」
「わかってる。でもかっ飛ばすからな。着いてこれるか?」
「…ほら、わかってないでしょう!」
お兄様の何気ない一言に、凪が目くじらを立てる。
周りの笑いと共に、帰ってきたんだなぁ…と、しみじみ感じてしまった。
そうして、夜叉王率いる視察団は出立する。凪や伽耶はお留守番で私達を見えなくなるまでお見送りしてくれた。
視察団は、私とお兄様、護衛の騎士が四名。
遅れを取らないように、お兄様の筋肉質な背中を見つめながら、気を張って手綱を握る。
…馬に乗るの、あの野営生活以来だ。
思い出すと、ブルッと背筋が震えてくる。
しかし、かっ飛ばすと言われた通り、本当に馬足は早く、気を抜いたら置いてかれそうだ。
無理もない。今日はいつもよりちょっと遠い地方へと向かっているから。
何の視察かというと。
じゃがいも。
…本日は王領の南東の地域に出向き、じゃがいもだけではなく、農作物の収穫は如何程か、困り事やご要望はないか、農家さんを直接訪問するのだ。
公務でもあるけど…半分、お兄様の趣味。