婚約解消してきちゃいました?ヘタレ令嬢様のチートキャンプ!
それから、視察は夕方まで続いた。組合長も一緒に次々と別の農家を訪問する。また別のじゃがいも農家だったり、玉ねぎ農家だったり、お兄様の大好きなとうきび農家だったり。
忙しく移動しながらの訪問を終え、金剛鬼宮に帰還したのは日の入りと同時だった。
馬を厩舎に戻し、護衛の騎士達が大きな箱を抱えて王宮へと運ぶその横を歩く。だが、その箱を見るとついつい笑みが溢れてしまう。
箱の中身は、各農家さんからおすそ分けしてもらった作物たち。今度こそ凪にお土産を持ち帰ることが出来てよかった。…ちなみに私は後であのじゃがバターを再現する予定でいる。
その箱たちを持って王宮の中に入ると、奥から凪が姿を現す。
「王っ!羅沙様っ!」
「凪ただいまー。今回はお土産持ってこれたよ!」
「…た、大変です!」
大変?
よく見ると、凪は穏やかにお出迎え…ではなく、またしても血相変えてこっちに爆走してきているようだ。
どうしたんだろ。
「何だ騒がしい。今に始まったことじゃないけどな」
「私がいつも騒がしいというのですか!…じゃなくて、王!大変です!」