最愛なる妻へ~皇帝陛下は新妻への愛欲を抑えきれない~
ひとりになった部屋で、イヴァンはブーツを脱ぎ剣帯だけ取ってベッドへ寝ころぶ。
わずらわしそうに軍服の襟元をゆるめたとき、部屋にノックの音が響いてドアが開いた。
「お水をお持ちいたしました、陛下」
入ってきたのは辺境伯でも侍従でもなく、ジーナだった。
体を起こし一瞬目を丸くしたイヴァンだったが、すぐにククッと苦笑いを零す。
「また侍従の役割を奪ってきたのか。お前はいつもそれだな」
ジーナはベッドサイドまで行き持ってきた水差しからグラスへ水を汲むと、それを両手で差し出しながら言った。
「陛下のお役に立てる機会ですもの、遠慮なんかしませんわ」
それを受けとって一気に飲み干すと、イヴァンは空のグラスをジーナに返してから仰向けに寝転んだ。
「俺はもう寝る。お前はさっさと出ていけ」
けれどジーナは命令には従わず、グラスをサイドテーブルに置くとイヴァンにそっと手を伸ばした。