最愛なる妻へ~皇帝陛下は新妻への愛欲を抑えきれない~
「このままではお洋服がしわになってしまいますよ。お脱ぎになってください」
今日は気さくな宴とはいえ、辺境伯からの正式な招待なのでイヴァンは常勤用の軍服に勲章もつけている。さすがにこのまま寝るわけにはいかない。
ジーナは軍服のボタンを上からひとつずつ外していき、腰帯を解いていく。
イヴァンは「構うな」と口では言うものの、起き上がりはしない。
「今夜の陛下はとてもよいお顔をしてらっしゃいますこと。楽しそうで、穏やかで……私はずっと陛下のそのようなお顔を見たく存じますわ」
軍服の前を開き中に着ていたネッククロスを外し襟元を開くと、ジーナはあらわになったたくましい首筋にツゥッと指先を這わせた。そして身じろぎしないイヴァンの鎖骨に、そっと唇で触れる。
「今夜の宴は刹那の憩い。スニーク帝国のために戦う者たちの刹那の安らぎを、誰が咎めることができましょうか。……たとえ、それが神様であっても」
妖艶な唇が紡ぐのは、甘く温かな誘惑。
ジーナの言うことは間違ってはいない。命を賭して戦う者には、心から安らげる休息が必要だ。きっと今夜は酒に溺れ女の柔肌に埋もれて眠る兵士がたくさんいるに違いなかった。
頬に触れてくるジーナの温かな手の感触を覚えながら、イヴァンは深く息を吐く。
その心地よさは本能に訴えかけ、酒で酩酊した頭に抗えないほどの劣情を呼び起こすけれど――。