最愛なる妻へ~皇帝陛下は新妻への愛欲を抑えきれない~
――十一月。白く染まったスニーク帝国の街に、教会の鐘が響き渡る。
国中の教会が鳴り響く中、国民は万歳を繰り返し国旗を掲げ歓喜に歌い踊った。
帝都コシカでは祝砲が打ち上げられ、降雪にも拘らず町は祭りのごとく賑わいワインと菓子と花が振舞われた。
アスケルハノフ朝第七代目皇帝の座を約束された皇子の誕生である。
ナタリアは無事に妊娠期間を乗り切り、玉のように愛らしく健やかな男児を産んだ。彼女の側近らも大泣きするほど喜んだが、何よりイヴァンの喜びようと言ったら筆舌に尽くしがたいほどだった。
何せ彼は生まれたばかりの息子にスニーク帝国の最高勲章を贈り、ナタリアには新しい離宮を贈り、さらに多くの祝い金を各地方に下賜したのだから。
アレクセイと名付けた息子を、イヴァンはそれはそれは可愛がった。どこの晩餐会や舞踏会に行っても彼の話す話題は、アレクセイがいかに素晴らしい皇子であるかというものばかりだ。
そして同じくらい……いや、それ以上に、イヴァンは妻ナタリアを寵愛し大切に扱った。