最愛なる妻へ~皇帝陛下は新妻への愛欲を抑えきれない~
 
 
ここはスニーク大帝国、雪の国。
一年のほとんどを白で覆いつくされたこの国の風景を、まるで時の止まった世界のようだと人はいう。


スニーク帝国皇帝イヴァン・ロマーノヴィチ・アスケルハノフは、新妻と初めて過ごす夜を迎えていた。

幼なじみでもある隣国の王女ナタリアを妻に迎え、今日の昼間に結婚式を終えたばかりだ。

皇帝夫婦のために新しく用意された寝室は広く、外からの寒気を遮るため二重の絨毯や厚い壁紙で覆われている。窓からの冷気が入り込んでこないようカーテンもモスリンやベルベッドなど四重に覆われているが、今日は風が強いようでガタガタと窓を震わせていた。

部屋に置かれた大型のベッドにも二重のカーテンが下がり、中はカーテン越しの暖炉の灯りにほんのりと照らされている。

「ナタリア……綺麗だ」

イヴァンは自分の体の下に組み敷いたナタリアの姿を青い瞳に映し、こみ上げてくる喜びを噛みしめながら言う。

彼の新妻は――ナタリアは、美しかった。

金と銀の混じったプラチナブロンドも、一片の穢れもないアラバスターの肌も、長い睫毛に縁どられた伏し目がちな目も、男を惑わすような甘い目もとも、細く高く整った鼻も、雪を割って咲く花のような唇も。

まるでこの世のものではないのではと惑うほど、彼女は白く、儚く、美しかった。

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