最愛なる妻へ~皇帝陛下は新妻への愛欲を抑えきれない~
ナタリアの再教育が始まった。
今まで離宮に閉じ込められたまま放ったらかしにされていた王女に、王家の者にふさわしい教育が施されるようになったのだ。もちろん、イヴァンの指示である。
あれから、錯乱したナタリアはすぐに眠りに落ち、目が覚めるともとの無表情で言葉を発さない人形のような状態に戻っていた。
二週間ほどチェニ城に泊まり込みナタリアに付き添っていたイヴァンは、やがて理解する。
通常の彼女は人形のような状態で、ふとした瞬間に精神が四年前に戻りローベルトを探しにいこうと錯乱するのだと。
精神が逆行するきっかけは不明だ。昼間のときもあれば、夜中のときもある。一日に二回もその状態に陥ることもあれば、三日連続でおとなしかったこともある。
ただ、錯乱状態のときは彼女が危険な行為をしないよう抑えることに必死で、とても教育どころではないので、現状、教育はナタリアがおとなしい状態のときに行われるようになった。
とはいっても、おとなしいときはおとなしいときで人形のように無反応なのだ。あてがわれた教師たちも、なんの反応も示さないナタリアに戸惑うばかりだった。
教育など無駄ではないかと、教師も世話係らもひそかに口をそろえる。
けれどもイヴァンだけはあきらめなかった。