最愛なる妻へ~皇帝陛下は新妻への愛欲を抑えきれない~
 
「……イヴァン様がお許しくださるのなら、私は……あなたの妻になりたいです……」

ゆっくりとソファから立ち上がり胸に湧いた思いのままに答えれば、イヴァンは今までに見せたことのないような微笑みを浮かべた。

そして両手に包んだままのナタリアの顔に自分の顔を寄せ、そっと唇を重ねた。

厚手のカーテンの向こうからは、人々の賑やかな声と共にメヌエットの演奏が流れてくる。

イヴァンはナタリアの腰を抱き重ねた唇をそっと離すと、少し照れくさそうにはにかんで言った。

「踊りにいこうか。今夜は最高の夜になる」

その誘いにナタリアも頬を染めたまま微笑んで頷く。

イヴァンはナタリアの腰を抱いて舞踏会場へ戻り、ふたりはそのままメヌエットの輪に加わった。

――この夜、恋を知ったふたりの幸福は何物にも妨げられることはなく。次期皇帝と后候補の娘は若々しく美しい姿で人々を魅了しながら、冬の夜を踊り明かした。

イヴァンはのちにこの舞踏会のことを、『奇跡のように幸福な夜だった』と何度も語った。
 
 
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