君色に染まる
そう覚悟したのに、センセは耳を赤くしていた。


「……センセ?」


すると、今度はバランスを崩してしまうような力で押されてしまった。
マントから出たセンセは、持っていた荷物をすべて落とした。


しゃがんでそれを拾い集める。
手伝うために、俺もしゃがむ。


なんだか気まずくて、センセの方を向けない。


「もう、嫌だ……」


後ろからセンセの泣きそうな声が聞こえた。
恐る恐る振り向くけど、センセも俺に背中を向けていた。


「市原君といたら、私が私じゃなくなる……せっかく憧れの教師になって、頑張ろうって思ってたのに……どうして私、先生なんだろう……」


センセなりの告白のような気がした。
体温が上がっていくのが嫌というほどわかる。


「……センセ」


俺の近くにあった荷物を持ち、振り向く。


センセは目に涙を貯めている。


「ありがとう。そして、ごめんなさい」
「……どうして謝るの。今のは、ただ私をからかうための冗談だったってこと?」


荷物を渡すと、もう一度センセを閉じ込める。


「違いますよ。センセをこれからも苦しめるようになるから、ごめんねってことです」


数十センチ先にあるセンセの顔が、真っ赤に染っていく。
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