伝わらなかったあの日の想い
 うちが見えてきた時、空を見上げた賢吾が口を開いた。

「月が綺麗だな。」

賢吾の声に促されて、顔を上げると、満月には満たないけれど、半月を過ぎ、ぷっくりとした月が中空に差し掛かり、夜空にくっきりと輝いていた。

だけど、これって……

私は、賢吾の真意を掴めないまま、

「うん。綺麗だね。」

と思いを伝える。

けれど、賢吾はそれ以上、何も言うことなくうちに着いてしまった。

「送ってくれてありがと。
賢吾も気をつけて帰ってね。」

私は、玄関先で賢吾を見送る。

I love you かと思ったのに、違ったのかな。
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