片恋の魔女は死ねない
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 しばらくの間、スマホをいじりながら待っていると、

「英梨?」

 と言う男子声が聞こえた。きっと英梨の彼氏だろう。
 やはり、英梨より彼氏の方が先に来た。
 どんな人なんだろうな、と少しばかり好奇心が働く。

 から、と教室のドアが開き、男子が顔を見せる。際立って特徴のない、普通の男子高校生だった。先輩、というよりは同学年に見える。

「英梨?」

 どきんっ。顔を見て、声を聞いて、私の心臓は何故だか高鳴る。

「……英梨なら、先生に呼び出しくらって、職員室にいます」

 どくんどくんどくんと心臓の音しか聞こえなくて、自分がまともに話せているのか不安になった。体中に熱が走り、気持ちがぽわぽわする。
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