片恋の魔女は死ねない
「あ、そうなのか。ありがとう」
「いえ、英梨に伝えてくれって言われたので」

 どうしたの、私。なんか変だ。おかしい。
 身体も心も、私の物じゃないみたいだ。でも、嫌な感じはしない。むしろ、幸せだ。


 ––––––––もしかして、これが恋?


 まさかまさか、冗談でしょ。
 慌てて自分のうかれた感情を否定する。そんなこと、あってはいけないのだ。

 しかし。
 半ば冗談で出した結論が私の中にふっと落ちてきてしまう。

「……ねえ君、綺麗な瞳をしているね?」

 いつの間にか、近づいて来ていた英梨の彼氏が不思議なことを言う。
 私の瞳……?至って普通の黒だったはずだ。

「え?」
「綺麗な藤色(・・)をしているね。カラコン、じゃないよな」
「え、え、ええ?」

 藤色の、瞳?私の目、藤色なんかしてない。この人、目がおかしいの?

 色々おかしい。今の私は何かおかしい。

「あの、私、帰るので、あとよろしくお願いしますっ」

 そう言って、私は走って教室を出た。

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