彼女との距離感
カッチャンは驚いて俺の顔を見た。

「見ていいよ」

そう言って俺はコートを脱いで。

暖房のボタンを押した。

「写真、あったんですか?」

急に、カッチャンの声が小さくなる。

「うーん…。全部捨てたはずなんだけど。実は、母親と姉が隠し持ってたのがあったんだ」

8年前のストーカー事件以降。

俺は自分の持っている写真を全部捨てた。

自分の写る写真が気持ち悪かったからだ。

それから、写真を撮るのが大嫌いになった。

仕事で使うのは仕方ないと諦めたけど。

ずっと自分の写真を撮ることはなかった。

「うわぁ…、王子。金髪じゃないですか」

ペラペラとめくっていくうちにカッチャンの表情が明るくなる。

特に大学時代の写真を見て悲鳴を上げている。

「金髪なのは黒歴史だから」

「えー、凄く似合ってますけど」

カッチャンが笑う。

「大学時代はね、ほぼ姉の実験台だったからね。髪型変わりまくってるでしょ」

「ひゃー、お姉さん。凄いですね」

嬉しそうにカッチャンが写真を眺める。

美容師になった姉はよく、家族を実験台として練習していた。

特に俺は姉のいいなりの髪型だった。

「ほんとカッコイイですね。王子」

アルバムを見終えてカッチャンが笑う。

「でも、どうして写真なんかを?」

「うーんと・・・」

言葉に詰まる。

覚悟を決めなきゃ。
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